Limehouse Blues



ジャンゴ・ラインハルトによる「ライムハウス・ブルース」を聴きながらどうぞ。

ライムハウスという町に一年近く住んでいたことがあります。ロンドンでは有数の錆びれた下町で、オリンピック開催に関係したジェントリフィケーションの兆しはちらほら伺えるものの、まだまだ空家、スクワット、怪しげな商店、ゲイバーが軒を連ねるという活気は消えません。観光的な見地から言えばほとんど何もないこの町(でもCable Street StudioTroxyなど音楽ヴェニューはいいのがあります)ですが、歴史を紐解くとなかなか興味深い事実が見受けられます。そして現在のこの町に漂う怪しげなオーラが実は世紀を超えて受け継がれてきたある種の伝統であることに気づくでしょう。

もともとはテムズ川を使った船による荷揚げの要所で、造船なども盛んであったらしく、ライムハウス(石灰置き場)という名前もその名残りのようです。徳川家康に仕えた三浦按針ことウィリアム・アダムスもここで船大工をしていたという記述がWikipediaにありました。

で、国際的な貿易に携わる港町の定めとして、ありとあらゆる人種、民族、動物、麻薬、娼婦、ヤクザ、ゴロツキ、物好き、宣教師、料理人、商人、などがチャンスや金や安らぎを求めて住み着き始めます。中華街も形成され、阿片窟もたくさんあったそうな。
第二次世界大戦中に爆撃を受けたこともあり、中華街は別の場所へと移っていきましたが、怪しげな雰囲気は消え去ることはなく、多分そのまま今に至る。

a0191086_017225.jpgおもしろいことに、1960年に、シチュアシオニスト・インターナショナルがコマーシャルロードにある英国海員組合会館で会合を持ったそうです。ライムハウスが会合の場に選ばれた経緯は以下のとおり。

「SIの第4回大会は、1959年5月に開催されたミュンヒェン大会から17ヶ月後、1960年9月24日から28日まで、ロンドンのイーストエンドの秘密の場所で開かれた。ロンドンに結集したシチュアシオニストは、ドゥボール、ジャクリーヌ・ド・ヨング、ヨルン、コターニィ、カティア・リンデル*1、ヨルゲン・ナッシュ、プレム*2、シュトゥルム*3、モーリス・ヴィッカールとH・P・ツィンマーであった。大会の討議は、実は、ロンドンの芸術関係者や新聞・雑誌記者との接触を巧妙に避けた場所として、「犯罪者が多いことで名高い」(『シュプール』誌、第2号)ライムハウス地区にある「英国海員組合会館」で行われた。」
アンテルナシオナル・シチュアシオニスト第5号(1960年 12月)より。

うーん違いない。その後から現在に至るまでの歴史についてはよくは知りませんが、あまり陽気なものではなかった、というかどちらかというと悲惨なものであったということは想像に難くありません。

実際に、長く住むにつれてだんだんと居心地が良くなっていく一方で、なんとなく気分が陰鬱になっていくような磁場のようなものを感じたりもしました。まあどんな町でも多かれ少なかれそうなのかもしれませんが。いくら古い家を壊してモダンなフラットを立てても、この地区の小便臭さを無くしてしまうのは不可能であるように思えます。それがいいのか悪いのか、100%の自信を持って断言はできませんが、元住民としての気持ちを言うならば「ほっといてくれないかな。」というのが本音ではあります、


良くないいことばかり書いてしまったみたいですが、ぜひ東ロンドンにお立ち寄りの際にはライムハウスにも足を運んでみてください。
ヒッチコックが住んでいたという魚屋の建物も現存していますが、内部は完全な廃墟です。「裏窓」もこのあたりが舞台ですねそういえば。






a0191086_1494277.jpg


Limehouse Blues その他のバージョン。The Mills Blothers, Nancy Sinatra, Annie Rossなどのバージョンは歌入りです


And those weird China blues / Never go away
あの奇妙なチャイナブルーズが 頭から離れない
Sad, mad blues / For all the while they seem to say
悲しく、狂ったブルーズ、 それはずっとこう繰り返しているようにも聞こえる

Oh, Limehouse kid / Oh, oh, Limehouse kid
おお、ライムハウス・キッドよ、 ライムハウスの子供よ、
Goin' the way / That the rest of them did
他の子供たちが行った道を お前も辿りつつある
Poor broken blossom / And nobody's child
無残にもバラされたつぼみ、 親のない子
Haunting and taunting / You're just kind of wild
呪いと嘲り、 お前はまさに野生のもの

Oh, Limehouse blues / I've the real Limehouse blues
おお、ライムハウス・ブルーズ これこそ本当のライムハウスの憂鬱 
Can't seem to shake off / Those real China blues
この本物のチャイナブルーズを 払いのけることはできそうにない
Rings on your fingers / And tears for your crown
お前のしている指輪 そしてお前の母国のために流す涙
That is the story / Of old Chinatown
これは古びたチャイナタウンのお話
Rings on your fingers / And tears for your crown
That is the story / Of old Chinatown

(Written by: Philip Braham; Douglas Furber )
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by kadooma | 2011-01-07 12:43


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