ベルシスターズを流行らせる作戦にまんまと乗せられてください。

The Bell Sistersという、50年代にアメリカで人気のあった姉妹歌手がいたそうです。
50年代にアメリカで人気のあったものが現代ではすっかり忘れ去られている(なかったことになっている)というのはよくあることですが、おそらくこのベル姉妹もどちらかというとそっち側に入るでしょう。日本語でのインターネット上での情報はほとんどなく、アマゾン等の商業サイト以外では唯一、「音楽とデート」という個人の方のブログの記事に、公式サイトからの翻訳を見つけることができたのみです。


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「おいジッピーどうして目を瞑ってハミングしてるんだい?エスプレッソが強すぎた?」
「・・ベル・シスターズの幻覚が見えるんだ!」
「ベルシスターズ?確か50年代にほんのちょっと歌手活動してたんだよね。あとディナー・ショアの番組でスパイク・ジョーンズと共演してたね!」
「で、でもなんでベルシスターズの幻覚なんだ!?しかもシンシアとケイの両方の幻覚が!」
「いや、今日の台本には、君の脳の音楽を蓄積する部位が突然ベルシスターズの1951年のヒット、バミューダを何度も繰り返す、ってちゃんと書いてあるじゃないか」
「えっ!?俺らが今しゃべってんの台本があるの?」
「頼むよ、ジッピー。僕らの仕事にはあらゆることに台本があるじゃないか・・。今日の分持ってないの?」
「・・そうだった。ここだここだ、"4コマ目、ジッピー台本を見つけ、キメ台詞"」
(ZIPPY; Does It Meta? by Bill Griffith)

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僕がベル姉妹を知ったのはNHK-FMでやってたゴンチチの番組でHamboneという曲を聴いたのがきっかけでした。

Hambone: The Bell Sisters & Phil Harris←公式サイトで無料ダウンロードできます。(Hamboneは上から5つめ)

変ですね、物凄く。どうしてこんなに変なんでしょうか?変な曲ですが全米で19位だったそうです。結構人気だったんですね。ドゥーワップのようなノリも少しありますが、ドゥーワップが本格的に爆発するのは少し後のことです。何なんでしょうか?そもそも「ハンボーン」って何だ?

???

と聴いた後に?マークがいっぱい浮かんできたんですが、今までそれを長い間放置したままでした。で、なぜか最近になって一念発起して調べてみる気になりました。以下報告いたします。

まず、この曲のタイトルでもあり、曲の中でも狂ったように繰り返される"Hambone"というのは、どうやら北アメリカの黒人奴隷たちによって生み出されたダンス、あるいはビートの一種を指す名前のようであります。奴隷なのでドラムを使うわけにいかず、しかしそれでも楽しみたい彼らは、踊りながら自分達の体をパチパチ叩いてリズムを刻むことによって自らの娯楽を作り出したのでした(パチパチパンチのようなものですね)。もともとは食料にもずいぶん困っていた奴隷達が大家族を養うために考え出した肉の骨を煮込んだスープのことを"Hambone(ハムの骨)"と呼んでいましたが、「ごく限られた素材から節約と創造性でもって新しいものを生み出す」という精神が共通したものであるということでダンスのこともハンボーンと呼ぶようになったのだそうです。

この曲の中で聞こえるカスタネット乱打してるような音が"Hambone"です。このハンボーン・ビートはボ・ディドリーのドンツクビート発明にも影響を与えたという説もあるそうです。あと、上の四コマにおいても言及のある冗談音楽のスパイク・ジョーンズ(マルコビッチの人じゃないですよ)からの影響も、下敷きをくねくねさせてるみたいな音とかピュンピュンいってる飛ばし系の音の多用に見ることができます。ベルシスターズと一緒に歌ってるフィル・ハリスという人もそっち関連の人みたいです多分。(どっち関連?うーん・・・冗談関連?)

まようするに、この曲はかなりのハイブリッドなわけです。ディープなアフロアメリカンの伝統を洒脱なオーケストラと育ちのいい姉妹がやっちゃう。それは白人の資本主義による黒人文化の搾取じゃないかという意見もあるだろうし否定はしませんが、それよりもその結果がこんな変でおもしろいものになったということのほうに僕は意味を見出します。そして、これはまたもう一つのハイブリッド(あいのこ)であるドゥーワップと兄弟、姉妹関係にあると言うこともできるんじゃないでしょうか?

しかしながら、50年代半ばからドゥーワップが全米で大爆発して黒人も白人も巻き込んでエライことになってついにはロックンロールという奇跡の子を生み出す一方で、ベルシスターズは特に目立った活躍をすることもなく活動を休止します。


60年代初頭にリリースされた別バージョン"Hambone / Red Saunders & His Orch. with Dolores Hawkins & The Hambone Kids"は原曲よりもより黒っぽい雰囲気が強く、10年の間にアメリカの大衆音楽のテイストがどのように変わっていったかをよく現しています。このバージョンを使ってコメディアンがなんかテレビ番組をやってたりもしたそうです。

歌詞のページにはこのRed Saundersという人とLeon Washingtonがコンポーザーとして載っています。おそらく黒人達の間で伝承されてきた歌をバンド用に書き直した、というのが正しいかとは思います。ウィキペディアを見た印象では彼らはどちらも黒人のジャズミュージシャンであったようです。Red Saundersは一時期Sun Raを使っていたという記述も・・・



恐ろしくなってきました。
これ以上深入りすればアフリカどころか宇宙の果てまで持っていかれそうなので、そろそろ調査はやめたほうがいい気がします。


これはアメリカの前衛作曲家エドガー・ヴァレーズという人の作曲した曲です。僕はこのヴァレーズとハンボーンになんらかの関係があるんではないかとフランクザッパから逆算した大胆予想をしていたのですが、今のところ何も関連は見つかっていません。

あと、数年前に今はもう存在しない「The Voice Of Girls」というサイト(本当に素晴らしいサイトでした)の掲示板にハンボーンのことを書いたら、ある人が"Crambone"という曲のことを教えてくださいました。トムとジェリーのなかに出てくることで有名なこの歌も、跳ねたリズムと魔術的なスキャットが特徴的な不思議な歌です。日本語版の主題歌「なかよくけんかしな」にもちゃんと同じマジックがかかってるのが不思議です。三木鶏郎作曲。

あーそろそろ木星が見えてきたのでこのへんでやめます
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by kadooma | 2011-01-08 03:33


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