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青空文庫は危ない

ロンドンに住んでたころ(実はまだ住んでる)、たまたま青空文庫の存在を思い出して、みてみたら凄い面白くてずっぽりはまった。存在は知っているものの利用したことが無いという人は多いと思うので、そういう人や存在すら知らなかった人のために、青空文庫がいかにやばいかというのを一所懸命に伝えてみたいと思います。

青空文庫とは?
「青空文庫は、利用に対価を求めない、インターネット電子図書館です。
著作権の消滅した作品と、「自由に読んでもらってかまわない」とされたものを、テキストと XHTML(一部は HTML)形式でそろえています。」

古風な日本文学をヨコ書きのスクリーンで読むのはかなりオツなもので、タテ書きの書物で情緒たっぷりに鑑賞するのとは一味違い、純粋なテクストとしての魅力を発見することができます。縦書きじゃないと嫌だという人には縦書きにして読めるアプリケーションもあるみたいです。紙じゃなきゃ嫌だという人はプリントアウトしてください。製本されてなきゃ嫌だという人はアマゾンにでもどこでも行っちゃってください。
少しですが外国語で書かれたものの翻訳もあります。翻訳のオープンテクストについてはプロジェクト杉田玄白、英語とかのものはプロジェクトグーテンベルグがありますので興味ある方はどうぞ。

で、蛇足かとも思いますが、僕が青空文庫の蔵書をディグしてたときに見つけた、色とりどりの宝石のような作品たち、幻の毒キノコのような珍品、あるいは深海に人知れず生息し続けていた奇妙なウミウシのような名文の数々を、長くなりますが紹介します。

まず最初は(順番にとくに深い意味はありませんが)、プラトン著「クリトン」です。死刑に瀕したソクラテスとクリトンとの獄中での対話を描いたシリアスでほのかに悲痛な作品ですが、ソクラテスがペチャクチャしゃべりまくった後にクリトンが一言二言くらいのレスポンスで軽く受け流す、というのが繰り返される哲学的なバトルに手に汗握ります。でも手が汗でヌルヌルになってもパソコンで読んでるのでへっちゃらです!まあいちおう決着みたいなのは付くんですが、もっとも印象に残るのはクリトンのかっこよさ。クリトンのように生きたいと一瞬ながら思わせます。しゃべるのはほとんどソクラテスですが、タイトルは「クリトン」です。

次に紹介するのは日本の猟奇カルチャーのグル、夢野久作の作品です。
ご存知「ドグラ・マグラ」、これはヨコ読みで暗い部屋で読むのがお勧めです!あとぶっ飛びタイトルな小品がいくつか、「「生活」+「戦争」+「競技」÷0=能」「きのこ会議」「恐ろしい東京」、など。

「アッハッハッハッハッハッハッハッ……。
 ああア――ッ。くたびれたアッ……ト……。
 ねえ先生……話し賃に煙草を一本下さいな…………。
 ……オヤア――ッ。誰も居やがらねえ……。
 ここは監房の中だ……おかしいな。俺あサッキから一人で饒舌(しゃべ)ってたのかな……フーン……イッタイ何を饒舌(しゃべ)ってたんだろう……。
 ……桐の花が、あんなに散ってやがる…………。」
「キチガイ地獄」より)

次は凄いです。すごい短いし話し言葉ですが、想像を超えた破壊力。上村松園著「絵だけ」

阿片についての文章もいくつかあります。
国枝史郎著「鴉片を喫む美少年」南部修太郎著「阿片の味」芥川龍之介著「鴉片」

題名の面白さにひかれて読んでいるうちにその文筆家のファンになることもある。
原民喜「溺死・火事・スプーン」「焚いてしまふ」など。この原民喜の作品は本屋で全集を探してみようと思います。

次は大御所の夏目漱石です。「坊ちゃん」とか猫が主人公のやつとかもちゃんとありますし、特筆すべきは漱石が大学などで講演をした際の記録などがいくつかあることです。「私の個人主義」「模倣と独立」、など。また、漱石がロンドンで孤独に留学(のはずが登校拒否&引きこもり)していたときのことを記したエッセイもある。「自転車日記」「カーライル博物館」「倫敦消息」。小説家としての漱石の特異さ、新しさを堪能したい方は「抗夫」がお勧めです。面白いタイトルシリーズでは「変な音」

次も文豪の芥川龍之介「僕は」とか「或社会主義者」とか読んだ。ま、なんとなく龍之介の小説は本で読もうと思います。

一番怖かったのは、岡本かの子著「或る男の恋文書式」です。もし僕がこの男なら自殺を考えます。

自殺といえば、遺書シリーズも充実しています。「正雪の遺書」「興津弥五右衛門の遺書(初稿)」石原莞爾將軍の遺書原民喜の遺書與謝野晶子の遺書芥川龍之介の遺書、などなど。
平林初之輔著「私はかうして死んだ!」ていうのも推理小説やけど面白そう

あとちゃんと無政府主義者の文献もあります。エマ・ゴールドマン著「結婚と恋愛」大杉栄幸徳秋水著「死刑の前」とか。

グルメ、食通の走りと言えるであろう北大路 魯山人。鮎(アユ)についてのうんちくをぬめぬめと繰り返すそのしつこさ。故中島らもがエッセイでディスってたのはこの人に違いない。

今までは大体戦前のものでしたが、いくつか戦後のものもあります。秋野平著「ロック、70年代」。これは題名どおり70年代の(ある意味)象徴的なロックレコードを題材に当時を生々しく描いた回想録ですが、気の抜けたノスタルジーとはまったく無縁で、タナトスに満ちています。Mike Oldfield のTubular Bells を知ったきっかけは彼の文章です。




あと他に音楽系で、豊田勇造著「歌旅日記 ジャマイカ編」があります。独特のクセのある文章でジャマイカのレゲエミュージシャン達の生態が生き生きと描かれています。

ああ疲れてきました。ご察しかとも思いますが、リンクをこれだけ張っていくのも骨が折れる作業です。しかしやりがいはあります。切り貼りしてるだけなんですが。

続きます

時は戦前に戻って、吉行エイスケ。この人は昭和文壇の名士吉行淳之介のお父さんらしいですが、訳が分かりません。ダダイストらしいんでまあ訳が分かるためのもんではないんでしょうけど、息子をして「父の小説を終わりまで読んだものは、一作もない」と言わしめたその読者置いてけぼりっぷりは痛快です。しかし訳が分からないなりに、これが書かれた当時のモダンでレトロフューチャーでダンスホールでさらっと娼婦な雰囲気は伝わってきます。粋っていうんでしょうなあ。

あと萩原朔太郎の文章はめっけものでした。「僕の孤独癖について」を読むとなんか近親憎悪にも似た嫌な感じがなんとなくしたのですが、「猫町」を読めばそんなことはどうでもいいことのように思えてきます。

あともう一人、久坂葉子「落ちてゆく世界」は良かった。

まあ今のところはこんくらいです。


以上のように、青空文庫の旨みは堪能しても堪能しても尽きることがありません。しかし、もっともっとおいしくするわざがあるらしいのです。それは、青空文庫の蔵書の拡張に加担する、というやつです。僕もまだ未体験なので詳しくは分かりませんが、やる気さえあればややこしいことは無しで参加できるみたいです。青空工作員マニュアル参照。このリストに載ってる作家のファンで、かつその作品のすごさをより多くの人に知ってほしい、というかたは挑戦されてはいかがでしょうか?

「アッハッハッハッハッハッハッハッ……。
 ああア――ッ。くたびれたアッ……ト……。」(「キチガイ地獄」より)

種田山頭火の「行乞記」でほっこりしてください。
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by kadooma | 2011-01-07 03:55


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